『チームバチスタの栄光』

チーム・バチスタの栄光

チーム・バチスタの栄光

去年の年末に出た『このミステリがすごい』の中で紹介されていた作品。
このミステリがすごい大賞という何だか良く分からない賞を取っており、評者のコメントで読んでみようという気になった。
さすがに著者が初めて書いた小説というだけあって、文章が素人のネット小説レベルで、商品として出版されるものとしては珍しい言い回しが多い。だが、登場人物は面白く、内容やディテールの積み重ねも現役の医者にしか書けないものなのは間違いなく、これはこれで面白い小説だといえる。

ミステリとしてはそんなに驚きも無いのだが、捜査していく過程やキャラクターの魅力で最後まで読ませてしまう感じ。

物語は、バチスタという心臓外科手術に秀でたチームで、連続術死が起こり、それを万年窓際の不定愁訴外来の講師が頼まれてやむなく調査していくうちに、チーム内の人間関係のあれこれや手術現場の様子などから徐々に違和感を感じ始め、最後にはとある人物の陰謀を突き止めるというような内容。

途中から登場する、侯成労働省の男がなかなか変わったキャラクターで後半の盛り上がりに大いに貢献している。しいて言うなら奥田英朗の『インザプール』や『空中ブランコ』に登場する精神科医伊良部に似た印象もある。といってもこっちの奥田作品の方が小説としては一枚も2枚も上手なのだが。

イン・ザ・プール

イン・ザ・プール

空中ブランコ

空中ブランコ


あと、バチスタと聞いて一番に思い浮かぶのは『医龍』という漫画。

医龍?Team Medical Dragon (10) ビッグコミックス―BIG COMIC SUPERIOR

医龍?Team Medical Dragon (10) ビッグコミックス―BIG COMIC SUPERIOR

天才外科医がバチスタ手術に挑むためにチームを作り上げていく物語。医療漫画というと世間では『ブラックジャックによろしく』の方がメジャーだが、読んでいてどんどん気分が沈んでいく『ブラックジャックによろしく』に比べ、『医龍』はどこまでも漫画に徹していてエンターテイメントしているところが個人的には気に入っている。
ブラックジャックによろしく(13) (モーニング KC)

ブラックジャックによろしく(13) (モーニング KC)

医龍』もドラマ化されるらしいが、どうなることやら。