『インファナルアフェア』三部作

第一作目をDVDで見てから一年くらい経つか。やっと三部作全てを見終わった。
最初はそんなに期待していなくて、何となく評判もいいので見てみるかというようなノリで借りた一作目『インファナルアフェア』

インファナル・アフェア [DVD]

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香港映画というと、ワイヤーで吊りまくりの妙なアクション(中にはいいのもあるけど)か、レオンカーウァイの『恋する惑星
恋する惑星 [DVD]

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みたいなシュールなの(これはこれでいいんだが)ばっかりという偏った認識の元にコレ見たわけで、あまりにちゃんとしたハリウッド的な作りだった事にビックリしてしまった。一作目のストーリーは、トニーレオン演じる正義の警官ヤンがマフィアに潜入捜査、一方、アンディラウ演じるマフィアの手下ラウが警官に成りすまして情報をマフィアに流しており、互いに潜入しているスパイの存在を知りつつも、互いの正体までは知らず、緊迫していく状況の中、どちらが先に「潜入」の正体にたどり着くかといったマンガっぽいものなのだが、これをうまく演出していくことで、上質なサスペンスノワールに仕上がっている。演出もさることながら、アジア人が出ている映画でこれほどハリウッド的なカッコ良さを感じたのが一番の驚き。近年の日本映画でそんなこと感じたことは皆無だが、(昔の黒澤映画の『用心棒』とか『七人の侍』の方がむしろスケールがデカく感じる。これらの映画に関してはまたいずれ)俳優達の演技や着こなしのせいなのか、編集のせいなのか、予算の問題なのか、ちゃんと分析できていないが、『インファナルアフェア』には非常にハリウッド的なスケールの大きさを感じた。(どんな映画でも可能な限り日本語吹き替えで見ているので言語の問題ではない)
出演者もかぶっているが、『HERO』(トニーレオン
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『LAOVERS』(アンディラウ)
LOVERS [DVD]

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など一連のチャンイーモウ作品も素晴らしいが、こちらは歴史モノなのでアジア人である必然性があり、衣装や背景などでハリウッドには無いスケール感やインパクトを出すことに成功しているが、これらのガジェットを使わず、あくまで現代劇のスタイルでこのような印象を作り上げているのは驚き。2作目は、これまた1作目の完成度からして、その前の話なんかいるのか?みたいな感じであんまり期待してなかったんだが、これがまた面白い。ややこしい話なので、説明が難しいが、マフィアの内部抗争を主軸に、1作目の主役2人の出生の秘密やなぜ「潜入」することになったのかが描かれており、1作目を見ずにこれ見ても首を傾げるだろうが、前作を見ているものにとっては、1作目への伏線などもちゃんとあって、なかなか楽しめる。ちょっとゴッドファーザー
ゴッドファーザーDVDコレクション

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のような雰囲気もあり、マフィア映画としても上質な仕上がりとなっている。欠点と言えば、主役2人が後のトニーレオン、アンディラウに似ても似つかない顔をしており、しかも2人の印象が似ているので、納得行かない上に混乱するという点か。ビジュアル重視で人気俳優を選んだんだろうが、とても残念。
で、三作目。これは、時系列的に1作目の後の話だが、その中に1作目以前の話や1作目では描かれなかった主人公達の行動などが入れ子になったような構造で、ちゃんと見ていないとややこしいかもしれないが、うまく構成されていて、オチもあり、ミステリーとしてもわりと楽しめる。三作目で新たに登場したヨンとシェンというキャラクターがなかなか味があり、ストーリーの骨格をうまく支えている。エンドロールで気付いたんだが、シェンを演じた俳優、チェンダオミン(名前がダミアンみたいなので覚えてた)は『HERO』で始皇帝演じた人だね。見てる間は、サングラスとひげのせいで全然気付かなかった。日本でいうと渡哲也みたいな感じなのかな。これはなかなかストーリーの説明が難しく、特徴的な部分はどれもネタバレになりそうなんだが、大まかに言うと、1作目で生き残ったラウ(マフィアが警察に潜入している方)が、自分の正体を知るかもしれない残りの「潜入」を探し出しては殺し、ある目的を達成しようとするのだが、その過程で、ヤン(トニーレオン)に精神的にどんどん同化していってしまい…。といった物語で、こういう説明ではチンプンカンプンだろうが、様々な過去の行動が明らかになっていき、錯綜した状況が紐解かれていくという構成になっている。最後まで見てもいろいろ「?」が残る部分は多いが、あの物語を終わらせるという意味で、この結末は正解なのかもしれない。余談だが、オープニングクレジットのエレベーター内に仏像や中華建築が浮かび上がると言う演出はなかなか面白いと思う。この作品、音楽もカッコいいしね。
そういえばブラッドピット主演でハリウッドリメイクされるという話もあったが、進んでいるのだろうか。最近その話あまり聞かないなぁ。こっちも一応期待してるが、リメイクする側としてはこういうカタチで三部作化されてしまうと、逆にどういう構成にしようか迷うかもな。まあ普通に1作目をリメイクするんでしょうが。