『姑獲鳥の夏』

『姑獲鳥(うぶめ)の夏』を見た。

原作はもう6〜7年前に読んだと記憶している。
文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)

原作のシリーズがどの程度好きかというと、『塗仏(ぬりぼとけ)の宴』
文庫版 塗仏の宴 宴の支度 (講談社文庫)

文庫版 塗仏の宴 宴の支度 (講談社文庫)

文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)

文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)

までで止まっている程度の読者なわけだが、一番好きなのは
『絡新婦(じょろうぐも)の理』だったりする。
文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

これは蜘蛛の糸のように入り組んだ家系で起こる殺人事件の話で、なかなか面白い仕掛けのミステリ。講談社ノベルズ版は読んでるだけで筋肉付きそうな位ブ厚いが、まあ文庫版なら大丈夫か。
文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)

文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)

逆に一番キツかったのは『鉄鼠(てっそ)の檻』。
山奥の寺で次々に僧侶が死んでいくミステリ。○○だと思ってたら実は○○○だった!というだけのネタのためにこんなにページ数を費やせるのが逆にすごい。読むのはかな〜り疲れた覚えがある。まあイメージは『薔薇の名前』みたいな感じかな。
薔薇の名前 特別版 [DVD]

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それはともかく、映画版の『姑獲鳥の夏』だが、個人的に趣味が合わない実相寺昭雄監督ということで、あまり期待せずに見た。
こういう原作モノでは一番気になるのはキャストがどうなっているかという点だが、ここに関しては京極堂堤真一というのはとても正解だと思った。台詞回しで少々軽すぎる所もあったが概ね原作のイメージを損ねずに演じていてうまいキャスティングだなと感心した。阿部寛の榎木津もなかなかイメージに近いエキセントリックな感じでぴったりかと。木場修の宮迫ももう少しガタイが良ければピッタリだったかもしれない。その他のキャストもそんなに違和感無く、配役に関しては概ねうまくいっていると思う。関口役の永瀬正敏はちょっと演技過剰というかパッとしなかったが、そもそも原作でもああいう妙なパッとしないキャラクターなのでこれはこれでしょうがないかもしれない。
美術に関しても、京極堂(古本屋のセット)とか眩暈坂などをうまく作り上げていて、衣装などもそれっぽくてとても感心した。蛙の赤ん坊のプロップのデキはいただけないが…。まああんまりグロくしてもねぇ、というところなんでしょうか。
物語はそもそも映像化するのに無理のあるネタを扱っている割にはまあうまく誤魔化している。やっぱりこれは原作を読んだときから思っていたが、そもそも本格ミステリとして成立しているとは言いがたいところが個人的にはどうかと思うが、謎解きよりはキャラクター(人の記憶が見える探偵とか、陰陽師の古本屋とか)と彼らの妙な言動を楽しむものだと考えれば、十分に作品として成立している。ただし、相変わらずの実相寺演出に辟易(好きな人はこれでいいんでしょうが)。謎のスポットライトや無駄に長い間、舞台みたいな作り物くさい演出などはホントうんざり。中途半端にこういうことやるくらいならむしろ『ドッグヴィル』くらいやっちゃった方が逆に清々しい。(ここまでやったら京極ファンはキレるだろうけど)というのは言い過ぎだけど、キャストとかシナリオは悪く無いんだから、変な演出せずに普通に作って欲しかったな。原作の眩暈のするような言葉の渦とかロジックの展開みたいな言葉でしか出来ない表現の部分を映像に置き換えたとかそういう意図なのかもしれんが、普通に京極夏彦好きな中高生にはキツいでしょうな。そんなに演出的なクオリティ高いとも思えんし。続編は別の監督だったらいいなぁ。『魍魎の匣(はこ)』は結構ミステリ的にも面白いしね。
文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

「○の中の少女」をビジュアル化したらかなりグロいかもしれんが。
そういえば京極夏彦本人が水木しげるの役で出てましたね。以外に演技上手だった。昔『ゲゲゲの鬼太郎』のとあるエピソードで京極堂を名乗るキャラクターに声当ててたし、意外に出たがりなのかね。
それはそうと、買うには買ったが、まだ手をつけてない最新刊(といっても随分前だが)の『陰摩羅鬼(おんもらき )の瑕』も早く読まないとねぇ。
陰摩羅鬼の瑕(おんもらきのきず) (講談社ノベルス)

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