『フライトプラン』

この冬初めての雪が降る中、先行上映で『フライトプラン』を観た。

フライトプラン (〔洋画文庫〕)

フライトプラン (〔洋画文庫〕)

飛行機の設計技師である主人公の女性が自分も設計に携わった飛行機に乗り込んだ。死んだ旦那の遺体の入った棺とともに。彼女はフライト中に寝てしまい、ふと目覚めると一緒に乗ったはずの娘の姿が無い。客室乗務員らに娘の捜索を要求するが、そもそも娘の搭乗記録も無く、自分の娘などはじめから一緒に乗ってはいないという。だがどうしても信じられず娘を必死で探す主人公。などといった、予告編などで事前に知りうる情報から、こりゃ面白そうだと思った。
それに加え、主演ジョディフォスターという安心感(なんとなくいい脚本選んでそうなイメージがある)もあり、結構期待して観た。
まあそこはヒネたミステリマニアなので、事前にオチをあれこれ妄想してしまうわけだが、上記の事前情報から想像するに、これはきっとアガサクリスティーの『オリエント急行殺人事件
オリエント急行殺人事件 [英語版ルビ訳付] 講談社ルビー・ブックス

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だなとか、飛行機という密室だと思わせておいて、空中給油など、密室外の要素が存在して云々とか、まさかとは思うが妄想じゃないと思わせておいてやっぱり妄想でしたとかかな?とか、飛行機の技師なので、飛行機会社の陰謀に巻き込まれる社会派ミステリ的な要素があったりするのかななど色々考えつつ観たわけだが…。いやネタバレになってしまうのでどれが正解だったとか違うとか言えませんが…。あと、女版の『ダイハード』みたいな展開を期待させるシーンも予告編にあったな。
ダイ・ハード [DVD]

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話はそれるが、ジョディフォスターで母娘の話と言うと『パニックルーム』を思い出す。物語は地味な仕上がりだが、部屋の中をカメラが縦横無尽に移動し、デビッドフィンチャーのマニアックな映像センスを堪能できる一品。これは結構オススメ。

で、肝心の『フライトプラン』本編を観ての感想もネタバレにならない程度に書いておく。
物語はは思わせぶりな出来事から始まる。冒頭の死んだはずの旦那と並んで歩くといっためくらまし的な演出、窓の外の像の頭が欠けているとか、向かいの窓からこちらを覗いている謎の男2人、予言めいたことを言う娘、カメラの文法の基本をきっちり押さえて、娘が本当に主人公の妄想かもと十分に客に思わせる演出(登場人物の誰の主観でも無いカットでは娘の姿は極力映らないように工夫されている)等など。

『007 ゴールデンアイ』で最後に裏切る006を演じたショーンビーンや、癖のありそうな客室乗務員、『24』のジャックバウアー役でおなじみのキーファーサザーランドにちょっと似た感じの航空保安官等々、いかにも怪しいクセのある登場人物たち、また否応無く9・11を想起させる飛行機というテーマ(怪しいアラブ人がいたりとか)など、ミステリ、サスペンスとしてどんどん盛り上がってゆく。そう、4分の3くらいまでは…。そこからの展開がなんともお粗末というか火曜サスペンス的ご都合主義というか…。(火曜サスペンスをバカにすると嫁さんに怒られるんだけど)まあどうお粗末なのか説明するとネタバレになってしまうので、どうにも書きようが無いが。
根本的な発想の原点は、「○は飛行機に持ち込む際にチェックがユルい!」っていうネタ(ホントか嘘か知らんけど)だと思うんだが、確かにそのネタはミステリの種として上々だし、そこからこういう話をでっちあげる手腕(あくまで予想だけど)は凄いと思うし、きっと分かった上で色々割り切って作ってるんだろうとは思うけど、ぶっちゃけ見終わった後の感想は『フォーガットン』の方が上(異論はあるでしょうが)。今回はジュリアンムーアの勝ちかな。ちなみに火曜サスペンス好きの嫁さんは、あーだこーだ突っ込みを入れつつも満足して観てたので、普通の人はそこそこ楽しめるのかも。自分もオチバレ直前まではとても楽しんで観てました。