『ポーラーエクスプレス』

仕事柄、フルCG映画はできるだけ劇場で観ることにしているのだが、最近フルCG映画も乱発気味で全部を劇場で観る気力も続かなくなってきている。これもそんな感じで見逃したうちの一本。

ポーラー・エクスプレス 特別版 [DVD]

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クリスマスの夜、サンタクロースの存在をだんだん信じられなくなった少年のもとに、北極行きの機関車「ポーラーエクスプレス」が現れる。それに乗って、妖精達がクリスマスの準備をしている北極の街まで旅をして、失われつつあったサンタを信じる心を取り戻すといったようなお話。いわば、カルト宗教に拉致られて洗脳されるのと同じなのだが、テーマがテーマだけにファンシーな物語たりえているわけで。
これはアメリカでは有名な絵本の映画化らしいが日本ではあまり有名じゃないですね。
急行「北極号」

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まあ日本には『銀河鉄道の夜』があるので、微妙にカブり気味だからなのかも。
銀河鉄道の夜 (岩波少年文庫(012))

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同じく映画化されてアメリカではそこそこヒットしたらしい『グリンチ』や『ハットしてキャット』なんかもアチラでは有名らしいですが、日本では知る人は少ない。まあこれらは日本受けするとはとても思えないキャラクターなので納得なのだが…。
グリンチ [DVD]

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Dr. Seuss - The Cat in the Hat [DVD] [Import]

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そんなわけで、『ポーラーエクスプレス』も絵本の映画化なので、大枠の筋も特にひねりがあるモノにも見えないし、退屈そうだなと思っていたわけだが、そこは『バック・トゥー・ザ・フューチャー(以下BTF)』シリーズのロバートゼメキス監督。

風に飛ばされてしまった大事なチケットがまた手元に戻るまでのピタゴラスイッチ的な展開や、割れそうな氷の上を走る機関車、ブレーキのピンが外れたおかげで大暴走してしまう機関車の顛末などなど、『BTF』で見せたスリル演出の力を遺憾なく発揮して、そこそこ楽しいものに仕上がっている。またそれを盛り上げる音楽が同じく『BTF』で素晴らしいスコアを仕上げたアランシルベストリ御大で、機関車でのアクションとなれば、『BTFパートⅢ』の再来なわけだ。特に音楽はそのまんまな感じで大満足。そういえば、ややネタバレになるが、機関車に住み着いている乞食のようなキャラクターは結局何者か分からなかったが、面白いキャラクターだった。こいつが実はサンタクロースなのかとずっと疑いながら見てた。

CGについてだが、機関車でずっと移動しているわけで、背景の物量大変だっただろうな。背景やキャラクターの質感も、あまりリアル過ぎず、程よい感じだと思える。表情はもう少し豊かでも良かったかもしれないが。ちょっとしか出てこない狼までものすごく作りこんであったりして、いやー全くよくやるよ。
CGオタクとしては、こういう写実系のフルCG映画はどうしても『ファイナルファンタジー(以下FF)』(映画版)と比べてしまう。『ポーラーエクスプレス』は一見『FF』に近い質感に見えるが、キャラクターに関しては、かなりディフォルメをしてあり、いわゆる『FF』の失敗(ただやみくもにリアリティを追求しても、普通の観客には気味悪がられる)から学んで、うまく質感やバランスを調整しているように見える。
先日ティザームービーが公開されたばかりで、まだ公開は先になりそうだが、ロバートゼメキス監督とスティーブンスピルバーグ監督が共に製作総指揮をつとめるフルCG映画の『Monster House』では、さらにディフォルメが進んでおり、ピクサーの『Mr.インクレディブル』のような、顔のデカいキャラクターとなっている。これは制作スタジオ自体が違っている可能性もあるので、『ポーラーエクスプレス』とは関連は無いかもしれないが。フルCGではこういう方が誇張した演技や表情を見せることができ、観客もアニメーションとして感情移入しやすいのかもしれない。

Mr.インクレディブル [DVD]

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これはCGとは関係ないが、最初ちょい役かと思ってたら出ずっぱりだった黒人の少女の顔がヤバすぎるんじゃなかろうか。これをもう少しかわいくすれば印象も結構変わったような気がする。見ていない方に印象をできるだけ正確にお伝えするとするならば、『妖怪人間べム』に出てくるベロが一番近いのではなかろうか。
妖怪人間ベム vol.4 [DVD]

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↑ちょうどDVD4巻のジャケットがベロだったのでアフィってみた。(もちろん変身前の方です)
実質これがヒロインっていうのはありえんだろう。どういう感性なんだ?もしかしたら原作には執拗にブサイクな描写がされていて、それを忠実になぞっただけなのかもしれんが。いや決して黒人だからダメと言っている訳ではありません。誤解の無いように。まあ見てみりゃ分かると思いますが。そういえば『アイスエイジ』の赤ん坊の顔もスゴかったなぁ…。
アイス・エイジ スペシャル・バリュー・エディション [DVD]

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あと、DVDのつくりに関して。音声が英語のみなのはコダワリなのか知らんが、やめて欲しい。トムハンクスの一人何役だかの演技が売りなんだろうけど、トムハンクスの演技がどんなに素晴らしかろうがそれほど興味ない。皆さんどうせ字幕読むんでしょ。日本語吹き替えで見たい人間にとっては迷惑なだけだ。
それから、細かい話だが、乗るときにもらうチケットに、車掌が文字をパンチしてくれるシーンがある。これが最後の軽いオチの伏線になる訳なのだが、DVDメニューでそのオチが丸分かりになるような絵をドカンと出したりするのは止めたほうが良いんじゃないのかな。ご丁寧に日本語にしたりして手の込んだことしているが、こんな演出、余計なお世話じゃないのか?北米版のDVDでもこうなっているんだろうか。