『イニシャルD(映画版)』

『イニシャルD』レンタル開始早々借りて見た。

『インファナルアフェア』の製作チームということで劇場で公開されたときからちょっと期待してた。キャストも結構カブってたし。クルマにはビタイチ興味無いのだが、原作は結構好きでアニメ版も見ていたりする。

正直、アンダーがどうとか半クラとかFFとかいったい何のことやら分からないのだが、そういう用語が飛び交うところもロボットモノのSFアニメを見てるみたいなノリで楽しんでいた。車種もコレに出てくる車だけ詳しくなってみたりとかそういう感じ。

で、映画版。高橋兄弟が一人に統合されていたりとか、ガソリンスタンドの店長と五月蝿い友達キャラが親子だったりとか、エピソードを色々はしょってランエボが突然出てきたりとか。設定などいろいろ変えてあるのだが、上手くエピソードを簡略化してあり、キレイにまとまっていて、結構原作を大事に実写化している印象を受けた。主人公の役者も漫画版のしょぼくれた感じがよくでていてピッタリ。主人公の父親とか極端に演出しすぎてキチガイスレスレになってたりもするが、香港映画のわりには随分日本を表現できているんではないでしょうか。あの登場人物全員キチガイ映画であるところの『カンフーハッスル』と同じトコロの人が撮った映画とは思えない節度を感じた。

親父の行く飲み屋が場末過ぎて日本なのか?みたいな感じだったが、ローソン出してみたり、JR映したりしてなんとか日本だと伝えようと頑張ってる感が伝わってくる。ちゃんと援助交際も描いていたし。ただ、鈴木杏より、ガソリンスタンドのバイトの女の子の方がカワイイんじゃないかという点で嫁と意見の一致を見たし、大方の感想もそうじゃないかという気がする。あと、主人公含めみな高校生にはまるで見えない。

一番のウリであるところのレースシーンがさすがに凄い。スタントドライバーの腕もさることながら、迫力のカメラの位置や、猛スピードで走る車のリアウィンドウを通過して車内に入っていく映像など、見所万点。キレの良い編集と相まって凄い映像となっている。ただ、残念なのはBGMがテンポ悪くて盛り上がらないこと。アニメ版ではエイベックスな感じのバカっぽい曲が、クルマが峠を攻めるというこれまたバカ丸出しの映像との見事なマッチングを見せ付けていただけに、この映画版も同じようにあのバカな曲で盛り上げてほしかった。あと、吹き替えはアニメ版と同じ声優にして頂きたかった。

あと、個人的にアメリカ版『イニシャルD』と呼んでいる『ワイルドスピード』と比べると非常に国民性の違いが感じられて興味深い。

ワイルドスピード』で描かれるのは、馬力中心のおバカチューンで直線をどれだけ無鉄砲にぶっちぎれるかというアメリカ人の国民性剥き出しのレースであって、カーブのテクニックとかましてやタイヤを側溝に落として曲がるなんてチマチマしたことは一切無しのマッチョな仕上がり。『ワイルドスピード』がアメリカで大ヒットし、『イニシャルD』がアジアで大ヒットするというのが非常に分かりやすい。香港にも韓国にも峠なんて無いので、そういう立地条件とは無関係で、やはり純粋に国民性の違いであろうと思われる。

そういう点は職業柄、ゲームにおいて強く感じますね。日本人がアメリカ向けコンテンツを製作する際に非常に良くブチあたる大きな壁でもあると思います。